2014年に公開された武正晴監督の『百円の恋』は、どん底の生活を送っていた女性が、ボクシングを通じて自分の人生を初めて自らの手で掴み取ろうとする姿を描いた、凄まじい熱量を放つ作品です。安藤サクラが、だらしなく太った引きこもりの前半から、肉体を極限まで絞り込み、野獣のような瞳に変わっていく後半までの変貌を、凄まじいリアリティで演じ切っています。

本作は、単なる「負け犬の逆転劇」ではありません。むしろ、どれだけ打ちのめされても、格好悪くても、最後までリングに立ち続け、闘い抜くことそのものの尊さを描いています。ラストシーンで流れるクリープハイプの主題歌とともに、彼女が放つ「勝ちたかった」という叫びは、観る者の魂を激しく揺さぶります。

日本アカデミー賞で最優秀主演女優賞をはじめとする多くの賞を受賞し、米アカデミー賞外国語映画賞の日本代表にも選出された、2010年代の邦画界における「魂の一打」とも言える傑作ボクシング・ムービーです。