2021年に公開され、多くの若者を中心に絶大な支持を得た『花束みたいな恋をした』は、脚本家・坂元裕二が書き下ろした、切なくも愛おしい現代のラブストーリーです。終電を逃したことをきっかけに出会った、麦と絹。好きな映画、音楽、小説が驚くほど一致した二人は、あっという間に恋に落ち、共に人生を歩み始めますが、就職という「現実」が少しずつ二人の距離を変えていきます。

菅田将暉と有村架純の、本当にそこに存在しているかのような自然で繊細な演技が、恋の輝きと、そして生活の中で摩耗していく感情の機微をリアルに描き出しています。実在のカルチャー名が固有名詞として次々と登場する演出が、二人の過ごした時間の密度を補強し、観る者に「これは自分の物語だ」と思わせる強力な没入感を与えます。特別な悲劇があるわけではない、しかし決定的に何かが終わっていく過程の描写は、あまりにも誠実で残酷です。

花束のようにいつか枯れてしまうかもしれない、しかし確かにそこにあった美しい時間を描き切った本作は、令和を代表する恋愛映画の金字塔として長く語り継がれるでしょう。