五十嵐大介の同名漫画をSTUDIO 4℃がアニメーション映画化した『海獣の子供』(2019年)は、日本アニメーションの映像表現の極致を体感させる、目も眩むような芸術作品です。自分の気持ちを言葉にするのが苦手な中学生の琉花が、ジュゴンに育てられたという不思議な少年「海」と「空」に出会い、世界規模で発生する海洋異変の核心へと迫っていきます。
特筆すべきは、海中の水しぶきや生き物たちの躍動、そして宇宙的なイメージの連鎖を、極限まで緻密に描き込んだ圧倒的な作画のクオリティです。久石譲によるミニマルで壮大な音楽と、米津玄師が書き下ろした主題歌『海の幽霊』が、物語の持つ神話的な奥行きをさらに深めています。
言葉での理解を越え、五感で「命の輝き」を感じさせる本作は、映画館という暗闇の中で体験すべき究極のビジュアル・ポエムです。日本のアニメが到達した一つの最高到達点と言えるでしょう。