1983年に公開された森田芳光監督の『家族ゲーム』は、当時の日本社会における「中流家庭」の欺瞞と崩壊を、斬新な演出とブラックユーモアで描き出した衝撃作です。受験生の次男のために雇われた家庭教師・吉本が、どこかピントのずれた家族を独自のやり方で変革していく様が描かれます。

最大の特徴は、横一列に並んで食事をする「食卓」のシーンです。家族間のコミュニケーションの欠如を象徴するこの異様な光景は、日本映画史に残る名演出として知られています。松田優作が、これまでのアクション俳優のイメージを覆す、不気味で飄々とした家庭教師を怪演し、伊丹十三や由紀さおり演じる親たちの滑稽さも際立っています。BGMを一切使わず、紙をめくる音や食事の音といった環境音を強調する手法も、家庭内の閉塞感を見事に表現しています。

高度経済成長を経て画一化された日本の家族像を、冷徹かつユーモラスに切り裂いた本作は、公開から数十年経った今でもその鋭さを失っていない、エポックメイキングな傑作です。