朝井リョウのデビュー作を吉田大八監督が映画化した2012年の作品『桐島、部活やめるってよ』は、21世紀の日本映画界に衝撃を与えた学園群像劇の傑作です。物語のタイトルでありながら、一度もスクリーンに現れない「桐島」という存在が部活を辞めたというニュースが、学校内のスクールカーストのバランスを狂わせ、隠れていた生徒たちの本音や葛藤を浮き彫りにしていきます。
同じ時間軸を異なる登場人物の視点から何度も繰り返す多層的な構成が、高校生活という閉鎖的な空間のリアリティを凄まじい精度で構築しています。神木隆之介演じる「下」に位置する映画部の前田と、東出昌大演じる「上」に位置しながら虚無感を抱える宏樹。二人が屋上で対峙するクライマックスシーンは、全ての「かつての高校生」の胸を打つ名シーンです。
日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞し、後の実力派俳優たちを多数輩出した本作は、単なる青春映画を超えて、人間が社会の中で抱える「役割」と「本当の自分」の乖離を鋭く突いた、極めて知的なエンターテインメントです。