山田洋次監督による『男はつらいよ』シリーズの記念すべき第1作(1969年)は、日本映画における「人情喜劇」の金字塔です。渥美清演じる主人公の「フーテンの寅」こと車寅次郎の破天荒ながらも憎めないキャラクターは、日本中で愛され、以後全50作にも及ぶ国民的シリーズへと成長しました。
本作では、家出していた寅次郎が数年ぶりに故郷の葛飾・柴又に帰省し、妹のさくらや、おじちゃん、おばちゃんたちを巻き込んで様々な騒動を引き起こす様が描かれます。寅次郎の不器用な恋心とその失恋、そして家族との絆が、笑いと涙を交えて温かく描写されています。
高度経済成長期を迎えていた当時の日本において、古き良き日本の情景や義理人情を残す寅次郎の姿は、多くの人々の心のオアシスとなりました。「男はつらいよ」は単なるコメディではなく、日本人の心の拠り所を描き切った、文化遺産とも呼ぶべき作品群の原点です。