1950年に公開された黒澤明監督の『羅生門』は、ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞し、日本映画の存在を初めて世界に知らしめた歴史的作品です。芥川龍之介の短編『藪の中』と『羅生門』を巧みに構成し、ある殺人事件の当事者たちが、それぞれ自分に都合の良い嘘をつき、真実が闇の中に消えていく様を哲学的に描いています。

宮川一夫による伝説的なカメラワーク、特に太陽を直接撮影するという当時としてはタブーだった手法や、森の中でのコントラストの強いライティングが、人間の内面の闇を象徴的に表現しています。三船敏郎の野性味溢れる多襄丸の演技や、京マチ子の妖艶で恐ろしい演技も圧巻です。

「真実とは何か」という問いは、現代においても全く古びておらず、複数の視点から物語を構成する手法は、後に「ラショウモン・エフェクト」として世界の映画用語にもなりました。映画という芸術が持つ、深い思索性と表現力を証明した不朽の名作です。