1974年に公開された野村芳太郎監督の『砂の器』は、松本清張の傑作ミステリーを映画化した、日本映画史に残る感動作です。殺人事件を追う刑事・今西の地道な捜査と、新進気鋭の天才音楽家・和賀英良の華々しい生活。この二つの軸が、クライマックスで演奏される組曲『宿命』とともに一つに重なり合う演出は、邦画史上屈指の名シーンとして知られています。
40分に及ぶクライマックスでは、犯人が隠し通そうとした過酷な過去と、親子の流浪の旅が台詞なしの回想シーンとして描かれ、菅野光亮のドラマチックな旋律がその悲劇性を極限まで高めます。加藤嘉演じる父親と加藤剛演じる息子の、言葉を超えた絆と過酷な運命は、観る者の涙を禁じ得ません。丹波哲郎演じる今西刑事の執念の捜査が、少しずつ真実を紐解いていく構成も秀逸です。
単なる犯人探しに留まらず、差別の歴史や人間の逃れられない宿命を重厚に描き切った本作は、今なお色褪せない感動を放ち続ける、ミステリーとヒューマンドラマの最高傑作です。